賃貸トラブル相談室報道局(新館)

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【巧妙】原状回復工事期間をめぐる争い。

本日は、原状回復に要する、工事期間の賃料は、誰が負担するのか考えて見ましょう。

 

一般的には、賃借人は退去時に、

家財道具をすべて搬出→カギを返却→立ち合い→修繕箇所の確認→合意書と言う手順で進めます。ここからが、本日の勉強ポイントなのですが、立ち合い時に、確認した修繕箇所の修復期間には、どの程度の期間を要するのかは不明です。

 

これらの事から、こうした原状回復工事は、退去後に行われ、賃借人が工事期間の賃料を負担する必要が無いのが一般的です。

 

 

しかし、不動産屋のなかには、悪質かつ巧妙な契約書を作成しているところが存在します。今回の契約書なのですが、巧妙に不当条項を盛り込んでおり、この契約書の作成には、法律家も絡んでいる事は明らかです。

 

さて、それでは、どのように悪質なのか、検証したいと思います。

 

 

この、契約書によれば、「本物件を明け渡す時は、原状回復をしてから明け渡さなければならない。」と書かれております。もし仮に、この条項どおりに解釈するならば、

「11月30日に退去するならば、早めに退去し、それまでに修繕工事を完了させてから、カギを返却しろ。」と言っているのです。つまり、工事期間中の賃料も、賃借人が負担しろと言う訳です。」

 

しかも、「施工については、貸主の指定する業者に依頼するもとする。」としている事から、修繕に要する期間も大家まかせになるので、工事がいつ始まって、いつ終わるのかもわかりません。

 

この、不動産業者の悪質なところは、原状回復を完了してからでないと、カギを受け取らず、明渡しが完了したとは認めないとしている所です。しかし、本当にセコイ会社ですな。私も、契約書を全部読みましたが、かなり、巧妙に練りこんである知恵者が作成した契約書ですね。

 

さて・・・・本題ですが、こうした契約書がある場合でも、原状回復工事が終了しないと、本当に明渡しが成立しないのでしょうか?

 

これに関して、過去の判例などから、私の見解を述べたいと思います。(少し長いので、気になる方は、お付き合い下さい。)

 

 

問題は、賃借人は、本物件を原状に回復して明け渡す義務を負っているが、原状回復を履行しないままで建物を明け渡す行為も、「明渡義務の履行」といえるかという点である。明渡義務の履行という観点から見るならば、賃借人は、賃貸借の終了した時点の状態で、本件物件を賃貸人に引き渡せば、明渡義務の履行は、行われたと解することになる。

 

賃貸人は、本来やるべき原状回復も行わないままでの明渡しなど、「明渡し」の名に値しないと考えているようだが、法的には、本件物件の明渡義務の履行とは、本件物件をあるがままの状態で明け渡すことであるから、建物明渡という債務に関して、それで債務の本旨に従った履行がなされたことになる。

 

したがって、賃借人が本件物件を原状回復もしないまま明け渡す場合であっても、賃貸人は、賃借人の原状回復が未了であることを理由としては、その受領を拒否することは法的にはできない。

 

明渡しが完了した以上は、賃料支払義務は発生しない事になるから、賃貸人は、賃借人に対して、原状回復の履行が完了するまで賃料を支払えという請求はできない。原状回復義務の履行と明渡義務の履行は別個の問題である。

 

賃貸人は、第19条第1項第1号に基づき、契約終了日までに、原状回復義務を実施して、明け渡すべきと主張する。民法上では、賃貸借契約が終了する場合の、原状回復の時期については、民法に明確な規定はなく、原状回復するのに必要な期間に要する賃料を、賃借人に負担させるには、特段の特約が必要であるが、そのような特段の条項はない。

 

さらに補足すれば、賃借人が原状回復義務を負わない、自然損耗や経年劣化も含まれているにも関わらず、これらの施工期間分までの賃料を負担させるのは合理性が無い。

 

また、施工業者の選定を、賃貸人が指定しており、日程、施工方法なども、すべて賃貸人、管理会社が管理している事から、賃借人が、これらを選別する事は不可能である。よって、こうした条項は、消費者契約法9条「消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効」および消費者契約法10条「賃借人に対しての利益を一方的に害するもの」であるから無効である。

 

 

 

原状回復特約

賃借人は、賃貸借契約が終了した場合に、賃貸物を原状に回復する義務を負っているが(民法616条、597条、598条)、その原状回復義務の内容としては、賃貸物を借りた当時の状態に戻すのではなく、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧することであり、自然的な劣化・損耗や通常の使用により生じる損耗・汚損は賃貸人が負担すべきものと考えられている。

 

「賃借人は、賃貸借契約が終了した場合には、賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ、賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり、賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ、建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。

 

そうすると、建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。」

 

「これを本件についてみると、本件契約における原状回復に関する約定を定めているのは本件契約書19条であるが、‥同項自体において通常損耗補修特約の内容が具体的に明記されているということはできない。また、同項において引用されている本件負担区分表についても、‥要補修状況を記載した「基準になる状況」欄の文言自体からは、通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえない。したがって、本件契約書には、通常損耗補修特約の成立が認められるために必要なその内容を具体的に明記した条項はないといわざるを得ない。

 

本件契約を締結する前に、本件の入居説明を行っているが、上記説明においても、通常損耗補修特約の内容を明らかにする説明はなかったといわざるを得ない。そうすると、本件契約を締結するに当たり、通常損耗補修特約を認識し、これを合意の内容としたものということはできないから、本件契約において通常損耗補修特約の合意が成立しているということはできない。

 

まとめ。

つまり、このような特約があったとしても、賃借人の負担義務が無い、経年劣化による自然損耗まで負担させる事になるので、その工事期間中の賃料までを、賃借人が負担する義務は存在しないから、こうした特約条項は、消費者契約法および、信義則に反するから無効であり、支払義務は存在しないと言う事です。

 

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